内容証明のメリット・デメリット
内容証明ってどういうときに出したらいいのか?
・内容証明には出した方がいい場合と出さない方がいい場合があります。
まず、その前に内容証明のメリット・デメリットを整理しておきましょう。
・メリット
① 相手方に出した手紙の内容を後日証明することができる。
② 手紙を出した事、配達日を証明することができる。
③ 相手方に心理的プレッシャーを与えることができる。
④ 相手方の対応を伺い知ることができる。
・デメリット
① 費用が普通の郵便よりも高くなる。
② 細かい決まりがある(文字数とか何行とか)。
③ 書類を同封できない。
④ 良好な信頼関係が崩れることがある。
・内容証明は平たく言うと 相手方にケンカを売るようなもの・・・
ですから・・・なんでもかんでも出せばいいってもんじゃなくて、出すタイミング、出す出 さないの内容を吟味しなくてはなりません。
それでは具体的に色々なケースを見ていきましょう。まずは出さない方がいい場合からです。
・出さない方がいい場合
例1. あなたが今からも相手方と親しくしていこうと考えている場合。
先程も申し上げましたが、内容証明は平たく言うと相手方にケンカを売るようなものです。ですから、安易に送るべきではないと考えます。
例えば仮に相手方があなたの会社の取引先とします。売掛金が一回支払われなかった場合にあなたがいきなり内容証明を送ってしまうと相手方はどう思うでしょうか?
「たったの一回遅れただけなのに、それにこちらの不注意ではあるが支払日を勘違いしてただ けなのに・・・なんて会社だ・・・」と、あなたの会社は融通が利かないなどの悪い評価を 得てしまうかもしれません。
例2. 訴訟までは考えてない場合。
内容証明を送付することは訴訟を前提にしていると相手方には思われるはずです。特に行政書士、弁護士などの職印が押印されたものであれば、相手方も弁護士などを依頼する可能性があります。
ここで、行政書士のできる業務をご説明しておかなくてはなりません。
行政書士(ぎょうせいしょし)とは、行政書士法に基づく国家資格であり、官公署に提出する書類および権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出手続きの代理または代行、作成に伴う相談などに応ずる専門職である。
ですから、書類の作成、提出手続きの代理または代行を行うことができるのであって、訴訟の代理人はできません。訴訟の代理人は弁護士(一部、司法書士が行える場合もあります。)です。
訴訟になれば弁護士と弁護士の戦いになります。お金も時間か掛かります。それに精神的、肉体的にあなたは相当なダメージを受けると思います。ですので、現在抱えているトラブルを訴訟までは考えていない場合は内容証明は出すべきではないでしょう。
例3. 相手方に誠意が感じられる場合。
例えば相手方にお金を貸していて、相手方はお金を返す意志はあるももの今現在は経済的に大変な場合はどうでしょうか?・・・相手方が一括は無理だから、分割払いでの申し入れをしてる時に内容証明を送ってしまったら・・・
返って話がこじれる事が予想されますよね・・・月々払いでも少しでもあなたに返還されるはずだったお金が全く入ってこないのでは・・・内容証明を出したが為に入る予定のお金が水泡に帰してしまいます。
ですから、このように相手方に誠意が感じられる場合は内容証明は出さない方がいいと考えます。
ただし、注意しなくてはならない事があります。・・・
それは、相手方が故意に(わざと)そのように装ってるって事です。これは、判断が難しいですが、本当なのか嘘なのかは見極めが必要になります。
例4. 相手方が会社などで倒産しそうな場合。
例えば相手方が倒産しそうな会社だと、内容証明を見た相手方は会社再建を諦めて破産手続きに入ってしまうかもしれません。
もし、そうなれば厄介になります。回収が0では泣くに泣けません。少しでも相手方から返還してもらった方があなたの為になると思います。
例5. 相手方にあなたの不利な証拠を不本意ながら通知してしまう場合。
内容証明は、証拠を残すために出すというのが本来の目的ですが、あなたの証拠になるということは、相手方の証拠にもなるという場合があります。
例えば、あなたの方が慰謝料を100万円支払う約束をしたとします。しかも、口約束で念書などいっさい書かなかったとします。そして後日、100万円という金額に納得がいかなくなったあなたは相手方に対して、「先日、100万円の慰謝料を支払うとお約束しましたが、70万円にしてもらえないでしょうか。」と、内容証明を送ったらどうなるでしょうか?・・
元々、あなたには慰謝料を100万円で合意したという証拠はなかったのにもかかわらず、相手方に証拠をプレゼントしてしまった形になってしまいます。内容証明を送らなければ、話し合いで70万円にできたかもしれないのに・・・
しかし、そうなれば証拠を握った相手方は強気になって、100万円を要求してくると考えられます。
ですから、内容証明を送る時は、あなたの不利なことは間違っても書かないことです。あなたに不利な内容は、相手方に有利な証拠となるのです。
・出した方がいい場合
例1. 時効を止めたい場合。
時効をストップさせることを時効を中断するっていいます。時効が中断したら、またその時点から時効が進行していきます。
例えば、あなたが相手方にお金をお貸しした場合で・・・・・
相手方が期限が来ているのに、お金を返してくれないとき、あなたは相手方に「貸したお金を返してください。」と、普通の手紙でも内容証明でもあなたが送れば、それは相手方に「請求」した事になります。「請求」は時効を中断(時効をストップ)させる手段の一つです。
ただし、「請求」は、詳しく申し上げるとそれだけでは時効をストップできなくて6か月以内に裁判上の請求(訴訟を起こすこと)をしなければなりません。この裁判外の請求(訴訟を起こさないで請求すること)は正確には「催告」といいます。
ですので、あなたが相手方に「貸したお金を返してください。」と普通の手紙又は内容証明をお送りすると、それだけでは時効はストップしなくて、その後6か月以内に裁判を起こさなくてはなりません。
この「催告」は解り易く申し上げると、裁判までの「つなぎの役割」とイメージされると良いと思います。
時効が完成する間近であれば、当然あなたは時効をストップさせたいですよね・・・
この時に普通の手紙と内容証明だったら・・・・もちろん内容証明で送ることを考えるはずです。
時効が完成したら相手方に貸したお金をを踏み倒されてしまいますからね。
ですので、今までにもご説明してきましたが、配達証明を付けた内容証明を相手方に送ることが良いと考えます。届いた・・・届いてない・・・と無用の争いを避けることができます。
このように時効をストップさせる時は内容証明が良いのです。裁判になった場合にはあなたが有利になります。
例2. 期限の利益を失わせたい場合。
「期限の利益」とは、解り易く言うと、期限があることによって当事者が受ける利益のことを言います。
一般的に、一括払いでなく、分割払いが認められているときに債務者(上記、例1の場合ではお金を借りている相手方の事です。)が受ける利益のことです。
例えば、上記、例1の場合では、あなたが相手方に100万円をお貸ししたとします。100万円を一括で返還してもらう場合と、100万円を10万円ずつ月々10回払いで返還してもらう場合では、相手方はもちろん10回払いで返還する方が楽ですよね。
この相手方(債務者)の分割払いによる利益を「期限の利益」と言います。
ここでもう一つ大事なことがあります。それは、「期限の利益喪失規定」です。
期限の利益を設定するときは、「その支払いを怠り、通知による請求がなされても支払わない場合には期限の利益を喪失させる。」と言う文言をあわせて付け加えることが多くあります。
例えば、上記の100万円を月々10回払いで返還する場合で・・・・・
相手方が月々10万円の支払いを滞った場合で、「督促の通知がなされたにもかかわらず、期限内に支払わなかった場合には、残金一括払いになる。」というような文言を付け加えるということです。
このような文言を付け加えておくと、後に争いになったときに期限の利益を喪失させる条件だったんだと証明できるわけです。
このように重要な事、重要な条件を普通の手紙で送るのと内容証明で送るのでは、ここまでお読みしたあなたは容易に理解できるはずです。内容証明でお送りした方が良いかと・・・
例3. 慰謝料を請求したい場合。
離婚による慰謝料請求、不倫による慰謝料請求などは内容証明を出す場合に適しています。
まず、世間で良く使われる慰謝料とはどういう意味でしょうか?・・・・・
慰謝料とは、不法行為(違法に他人に損害を与える行為)により精神的損害を被った場合に支払われる損害賠償を言います。
相手方に不法行為が成立しなければ、慰謝料は請求できません。
・まず、離婚による慰謝料請求からご説明させて頂きます。・・・あくまでもあなたの離婚決意が固い場合のお話ですが・・・・・
婚姻関係を破綻させた責任が、あなたと相手方どちらにあるか分からない場合には慰謝料は請求できません。また、婚姻関係を破綻させた責任が、あなたと相手方が同じくらいの場合にも請求できません。
さらに、相手方の不法行為と離婚との間に因果関係が認められなければ慰謝料は請求できません。
例えば、相手方が不貞行為(法律的には「配偶者のある者が、その自由意志に基づいて配偶者以外の者と性的関係を持つこと」を言います。 簡単に言えば浮気のことです。 夫婦にはお互いに貞操義務を負わなければなりません。)をする前に、既に婚姻関係が破綻していた場合には、不貞行為と離婚との間に因果関係は認められませんので、この場合にも慰謝料は請求できません。
以上を踏まえて・・・相手方に不法行為が認められる場合には内容証明を出すべきでしょう。婚姻関係が破綻していて夫婦が別居しているときなどには効果的です。
・もう一つの不倫による慰謝料請求ですが・・・・・
例えば、相手方(ご主人、奥様)が浮気をしていて、それがあなた(奥様、ご主人)にバレテしまいましたが・・・あなたは子供のことを考えてもう一度夫婦でやり直すことにしたとします。
あなたはそれでも、浮気をしていた相手方の不倫相手に対してはどうしても許す事ができないとします。
この場合は不倫相手対して慰謝料は請求できるでしょうか?・・・
夫婦は、互いに貞操を守る義務を負っています。ですので、あなたの配偶者があなた以外と性的関係を持てば、あなたの権利を侵害したことになります。あなたが被った精神的苦痛を慰謝すべき義務を負います。あなたの配偶者は慰謝料を請求されても仕方ありませんよね。
さらに、この場合、不倫相手もあなたの配偶者と一緒になって、あなたに対する不法行為が成立致します。
ですから、不倫相手もあなたの配偶者とともに損害賠償義務を負うことになり、不倫相手に対しても慰謝料請求できるのです。
余談ですが、一昔前に、ある芸能人が「不倫は文化だ。」と、正当化しておっしゃってましたが、不倫は絶対的な社会悪です。許してはいけません。
このように、離婚による慰謝料請求、不倫による慰謝料請求には内容証明を送るべきです。
例4. 契約を解除したい場合。
契約解除はまさに内容証明に適しています。例えば・・・売買契約の解除、賃貸借契約の解除、クーリングオフなどです。
これは契約解除が重要な法的効果があることを意味します。契約解除が紛争に発展する可能性が高いことも意味します。
・例えば・・・賃貸借契約の解除の場合でご説明させて頂きます。
相手方である家賃を滞納している賃借人(アパートなどの部屋を借りている人)に対して、大家であるあなたが、「滞納家賃を1週間以内に支払ってください。支払わない場合は契約を解除します。」と、普通の手紙でお送りしたとします。
しかし、相手方の賃借人はそれにもかかわらず、何の返答もせずにそのまま居住し続けて家賃も滞納したままの状態です。
そこで、このことに憤慨したあなたは訴訟を起こしたとします。あなたは「この賃貸借契約はすでに送っている通知(あなたが以前にお送りした普通の手紙)によって解除されている。」と、主張したとします。
この時に、相手方である賃借人が「そんな通知は受け取った記憶がない。」と反論したとします。
この場合には、大家であるあなたが、解除の通知を送って賃借人である相手方がその手紙を受け取っていることを立証しなくてはならないのです。
しかし、普通の手紙でお送りしているあなたが、それを立証するのは容易に困難だと解るはずです。
これまでと繰り返しになりますが、届いている、届いてないなどの無用の争いになることを予防するには、やはり内容証明で出したほうがいいですよね。・・・
相手方である賃借人が「そんな通知は受け取った記憶がない。」と、もう反論できなくなりますからね。
・それと、もう一つご説明させて頂くのはクーリングオフです。
あなたは既にご存じかと思いますし、お聞きなられた事もあると思いますが、一応説明させて頂きます。
クーリングオフとは、訪問販売などで高額な商品を訳も分からないうちに契約させられてしまったときに、一定の期間内であれば、違約金などの請求を受けることなく、あなたの一方的な意志のみで契約解除できることです。
このクーリングオフは、上記の賃貸借契約の解除と同様にまさに内容証明がうってつけです。
普通の手紙だと相手方 会社などにクーリングオフの手紙が届いた、届いてない、などのトラブルが発生するかもしれませんが・・・・・
一方的な意志のみで契約解除できる訳ですから、後はあなたがいつ内容証明を出したか、期限内に出せば良いのです。相手方の会社などに届くのは期限後になっても構わないわけです。ですので、繰り返しになりますが、配達証明も付けて送るべきです。
このように、契約解除の場合(賃貸借契約の解除、クーリングオフ、売買契約の解除など・・・・)は、内容証明が適しています。
例5. 訴訟まで考えてる場合。
これは、上記、「内容証明を 出さない方がいい場合 の 例2」で、ご説明させて頂いた内容と全く逆の場合です。
このページの最初の方に書いてあります、メリット③「相手方に心理的プレッシャーを与えることができる。」を、主目的として内容証明を出した方がいい場合があります。
平たく言うとちょっと乱暴な言い方になりますが・・・相手方があなたをなめてる場合です。
あなたからお金を借りている相手方が何度電話しても無視され、又は着信拒否されているような場合には内容証明を出すべきでしょう。電話に出ないんですから、普通の手紙を出したってあまり効果は期待できないと思います。
こちらの、あなたの強い意志を相手方に伝えるには、やはり内容証明で通知すべきですよね。相手方に対しての最後通告として内容証明を出すべきです。
このように相手方に心理的プレッシャーを与えることで、相手方は真剣に考えるはずです。もしかしたら、相手方が任意にお金を返してくれるかもしれませんよね。・・・
弁護士や行政書士の職印が押印された内容証明であれば、なお相手方に与える心理的プレッシャーは相当なものになると思います。
ここまでお読み頂いていかがでしょうか?・・・・・
あなたは、「自分でもできそうな気がする。」と、お考えではないでしょうか?
内容証明は御自分で作成しようと思えばできます。
まずは、あなたご自身でトライしてみてはいかがでしょうか?
もし、どうしても、自分だけでは不安だ と、思われたときに弁護士や行政書士にご相談くださいませ。
さて、次のページからは公正証書についてのお話をさせて頂きます。・・・
読み飛ばすことのないようにしてくださいね。・・・